更新日時:2023/01/09
HMR(エイチエムアール)のイシケンです。11月27日に開催されたスーパー耐久シリーズ2022最終戦鈴鹿のレポートです。タイトルにある通り今回は今シーズン初のリタイアとなりました。このレースではこれまで依頼していたレースエンジニアの方との契約は終了し、自社チームと助っ人のRG-Oメンバーにて挑みました。プロのレースエンジニアが不在でレース運営をする大変さを痛感し、そして何が足りていないのかというのがよく分かったレースになり、結果はリタイアでしたがとても実りのあるレースとなりました。そんなレースレポートをお届けします。
木曜日の24日からレースウィークがスタートしました。この日は午後に2時間のフリープラクティスが設定されており、全クラス混合の走行になりました。この枠ではオーバーホールしてきたエンジンの慣らしからスタートです。慣らしが終わったらこれまでの4.8ファイナルギアから純正ファイナルギアへの変更がギア比的に合うかどうかのチェックを行い、後は燃費確認と各ドライバーの慣熟が主なメニューとなっていました。走行前の午前中にアライメントの最終調整も行いました。
スタートは私からということで、エンジン慣らしを他車に迷惑がかからないようスタートしていきましたが、ピットロード出た瞬間に水温アラートが!!
S字辺りでもう98度になっていて、その後もグングン水温が上昇する一方。無線で車とめるのかそのまま走ってピットに戻るのか伝えてもピットからは何の返答もない状態・・・。ヘアピンでは105度に。バックストレート走行中は108度。相変わらずピットからは何も返答がない状態が続き、そのままピットイン。どうやら無線が全く届いていなかったらしく、ピット側は何で入ってくるのだろうくらいな感じで、焦っているのは私だけという状態で頭からピットイン。
そこからメカニック達が現状を知って大慌てです。原因を探るべく色々とチェックしていく中でサーモスタットが原因ということがわかり、すぐに水を抜いてサーモスタットをチェンジしてまた水を入れてエア抜きしてという感じで、2時間のフリープラクティスの内1時間を無駄にしてしまいました。やはりエンジンを載せ替えしたらどこかで1度転がしてチェックしないといけないというのを身に染みてわかりました。
そんなことでようやく走り出してエンジン慣らしを終えたころには残り30分くらいという状況でした。ギア比は6速を使うことなく5速をきっちりと使い切れる感じで、デグナーからヘアピンまでが少しロスするかなというくらいで、概ね純正の方がマッチする感じというのを確認できました。
そして、タイヤを転がし用のUSEDから低走行のUSEDにチェンジしてマシンバランスチェックに入りました。が、メカニックが内圧を少し高い状態にセットしており、フィーリングが最悪という状態(笑)
午前中にこれまでのアライメントセットからRG-Oの大住さん(Cドライバー)セットに変更していたのですが、そのフィーリングチェックも含めてすぐに大住さんにドライバーチェンジしました。この時にメカニックが適正な内圧に調整した結果、どこかに飛んでいきそうなフィーリングはなくなったようでした。フロントダンパーがまだ張っている感じということで、減衰を緩めたら更にフィーリングは良くなったというので、最後にBドライバーの川原さんにチェンジしてこの日の走行は終わりました。
走行終了後、大住さんのフィーリングを元に大幅にセット変更することになりました。まだフロントが突っ張っているということでバネレートを1kg低い物に変更し、リアのヘルパースプリングも柔らかい物に変更しました。このセットは今シーズンの初めのテストで走らせていて、かなりアンダーが強くてウェットセットという感じだったので、個人的には果たしてどうなのかという疑問がありながらのセット変更でした。
これらのセット変更とアライメント調整を終えてこの日の作業は終了しました。
25日金曜日は午前中に1時間、午後2時間のフリープラクティスでした。午前中はグループ2のみというST3~5クラスのみの走行枠で、午後は全クラス混走となりました。午前中のメニューは予選シミュレーションでした。予選もグループ2のみで行われるので、ここで燃料を軽くして新品タイヤでのセット確認とタイム確認と言う感じで、AドライバーとBドライバーが主に走りました。ただ、私の走行前に1周だけ昨日のセット変更フィーリングのチェックということで大住さんがドライブしました。
フィーリングは良好ということでそのまま私にチェンジして予選シミュレーション!という意気込みでコースインしたらいきなり赤旗になりました・・・。
ピットで数十分待ってコースイン。そこから5ラップほどしてタイムは2分28秒の後半という感じでした。
続いてBドライバーの川原さんにチェンジ。アンダーが強めだったのでフロントの減衰を1クリック上げてコースインしました。次の周にはいきなり28秒フラット、そして27秒5、3ラップ目には27秒フラットまでタイムアップしました。予選で26秒台も見えて来た感触のまま午前中のフリープラクティスを終えました。
マシンフィーリング的にはやはり全体的にアンダーが強く、ステアリング蛇角は多い状態でした。そのため、ステアリングでの減速を考慮した侵入を意識して、ブレーキであまり落とし過ぎないでコーナーに飛び込むドライビングが求められるセットでした。ステアリング蛇角は少な目にして、ブレーキで曲げる派の私としてはこのセットのドライビングスタイルが違い過ぎて思うように走れるか自信を無くしていきました(笑)
昼食を挟んで午後のセッションへと移っていきます。午後は全クラス混走で2時間あるため、決勝シミュレーションを行う予定でした。ガソリンもそれなりに入れて重い状態でのマシンバランスのチェックと燃費データの計測が主なメニューでした。スタートは私からという感じで乗り込みましたが、ここで赤旗続出という事態に。コースインして1周するかしないかでどこかでスピン、クラッシュの連続で合計40分ほど潰れてしまいました。ようやく再開したものの残り時間を考えると多くの周回をすることが難しく、私は4ラップしてピットイン。タイムは30秒フラットくらいでした。その後川原さんにチェンジして5ラップしてピットイン。28秒台をマーク。最後に大住さんがコースインして6ラップ。30秒台というタイムでした。
ガソリンが重い状態でもマシンのバランス的には変わらずアンダー傾向でしたが、川原さんのタイムが良かったので走らせ方でカバーしていこうという方向になりました。
いよいよ予選日です。午前中は1時間の全クラス混走のフリープラクティスです。この枠の最初にFCY(フルコースイエロー)とSC(セーフティカー)の練習があったので、慣れていない大住さんスタートで行きました。がしかし、S字でGT3車両のメルセデスにリアをプッシュされてスピン。クラッシュは免れ、マシン的にも特に問題なかったのが幸いです。FCYとSCの練習が終わってピットインし、川原さんへドライバーチェンジしました。ここまでいいタイムを刻んでいる川原さんをスタートドライバーで行くことに決めたので、一番重いガソリン80Lを積んだ状態のバランスをチェックしてもらおうと乗り込んでもらいました。そんな中、一番重い状態でも30秒フラットが出ました。最後にリアの減衰を1クリック上げて最終チェックに1周してもらいましたが特にフィーリングは変わらないとのことで、そのまま私にドライバーチェンジしてピットインアウトだけ行ってフィーリングチェックをして午前中の走行を終えました。
予選はAドライバーから20分のアタックです。昨日の川原さんの27秒フラットのインカー映像とロガーデータを夜遅くまで分析して頭に叩き込み、それを実践できるように脳内シミュレーションをしてきていました。予選ラップは最大で5周です。なんとか27秒台中盤くらいは出したいと気合を入れてコースインしたらすぐに赤旗・・・。ほんと今回のレースウィークは赤旗だらけです。出鼻をくじかれましたが再び気合を入れ直してコースイン。60号車のGR86が目の前にいたので、なんとかついていこうと頑張り走行。途中でコースインしてきた他の4クラス車両に引っかかるなどして、まともに走れたのは1周のみでしたがタイムは28秒フラット。まだまだタイムアップする余地はあったのですがタイヤ温存でここで終了しました。
このタイムはもちろんクラスビリです。GR86勢のトップは21秒台。遅くても25秒台なので勝負にならないですね。
続いて期待の川原選手です。アタックは2周のみということでコースインして次の周でいきなり28秒台、2周目に27秒11というタイムを記録!その次の周もピットインギリギリまで攻め続けてセクターベストを刻み続けてきましたが、予定通りにそのままピットインしました。 そのまま走行していたら26秒前半くらいまでは見えていたのでマシン的には十分な戦闘力になっていたのかなと思います。
ABドライバー合算タイムでクラスは最下位からのスタートとなりました。これまでのレースもいつもそんな感じですが、旧型86はタイヤの摩耗が少なくレースになると後半強い傾向にあるため、またレースで1台でも抜けたらいいねという感じでこの日の予選は終わりました。
ちなみに、Cドライバー予選はあるのですがグリッド順位には関係なく、基準タイムだけクリアしたらOKということなので、新品タイヤの皮むきを兼ねて少しのアタックで終了しました。
この予選後にフロントの車高を上げて前後フラットにしました。アンダーがきつくてこれでは決勝でタイヤがもたない可能性があったためです。フロントのバネレートを木曜日の練習走行後に柔らかくしていて、車高は調整していなかったのでフロントが下がり気味でした。このセット変更でもう少しアンダーが消えてくれればいいなという感じです。
ついに決勝日を迎えました。このレースウィークはやることが多くてようやく決勝だという感じでした。昨日のセット変更がうまく機能していることを願い、5時間のレースがスタートします。メカニック達も入念に打合せをしました。グリッドではいつも通りの記念撮影♪ドライバーも気合十分です!
10時45分、5時間レースがスタートしました。グリッドが後ろの方でピットは9番なので急いで戻りました。今回、私はピットからスタートを見守ることに。ドライバーをしていてもピットにいても同じ緊張感でしたね。
さて、そんな中、川原さんは29秒台で周回を重ねてとてもいいペースでした。 GR86勢ともそこまでそん色ないタイムだったので流石という走りでした。途中でFCYが出たりSCが出たりと決勝レースも大荒れの展開でした。1回目のSCは最悪のタイミングで、ST-Xクラスの先頭車両に抜かれた瞬間にFCYが提示されたため、SCに切り替わった時には同じクラスの車両と丸々1周分の差がついてしまいました。このタイミングではピットインすることはなくそのまま走り続けて、2回目のSCが入ったタイミングで予定よりも早かったのですがピットインすることに。うまくSCを利用してのピットインが出来たので、40秒ほどリカバーすることが出来ました。そして、ここで私にドライバーチェンジ。このピットイオンでは元々60Lの給油でしたが、まだ40Lしか入らないので40L入れてドライバーチェンジ&タイヤ交換してピットアウトしました。
コース上はまだSC走行が続いている状態でした。ダンロップや最終コーナー手前ではなぞに渋滞が発生して止まることも。そんなSCランを2周ほどしてグリーンフラッグでスタート。周りは色々なクラスがごちゃまぜ状態で、抜かれるわ詰まるわで2周ほど34秒台のラップを強いられることになってしまいました。 その後少し隊列がすっきりとしてきて30秒台のラップに入ったものの、GRカローラに詰まってしまう状態で思うように走れないのが数周続きました。 コーナーは重量の差でこちらの方が速く、ストレートはGRカローラの方が速いという状態で、鈴鹿では全く抜けなくタイムロスが大きい状態でした。
ここで少しイライラしてしまったのが良くなかったですね。ようやく抜けそうな間合いにデグナー立ち上がりで追いつき、ヘアピンでイン側に入ったのはいいものの、旋回中に切り込まれてクラッシュ・・・。こちらとしてはもう逃げ場はない状態でどうしようもなかったのですが、トヨタ自動車の開発車両でドライバーはモリゾウ選手だったのでもっと余裕がある完全に抜けるところまで待つべきでした。
このクラッシュによって蛇角センサーに異常信号が入り、SLIPランプとABSランプが点灯。ABSランプ点灯は以前SUGOで大クラッシュの原因になったので、ゆっくりと走ってそのままピットインしました。異常信号はリセットで直ったのですが、フロント周りをチェックしていたらラジエターから冷却水が漏れていることが判明。クラッシュとは関係なく飛び石でラジエターに穴が空いていたのです。急遽ラジエターを交換することになり、ピットは大慌て。15分くらいでラジエター交換を終えて冷却水を入れてエア抜きを始めたところで、今度はエンジンから異音が・・・。
このまま走行を続けて他車に迷惑をかけることになってしまったらいけないということで、リタイアすることになりました。
レーススタートから約2時間です。まだ残り3時間もありましたが、無念のリタイアという感じでした。オーバーレブや異常な水温値などもロガー上では特に確認されることはなく、原因はその場で特定することはできませんでした。
このようなレースウィークではありましたが、プロのレースエンジニア不在の中で何をするべきなのか、何が足りていないのかというのがよく分かったレースで来シーズンに向けてとてもいい勉強になりました。この鈴鹿でのレースはまた一段とHMR Racingを強くしてくれたレースでした。
2023年に向けてはもう既にスタートしていて、12月中旬にはドライバーオーディションを行い、1月中には開幕戦に向けてテストを予定しています。富士24時間に出場するかはまだ予算確保が出来ていませんが、予算が確保出来たら2月には富士で公式テストも控えています。
今シーズンのレースを糧に2023年も頑張っていきたいと思いますので、引き続き実業団チームであるHMR Racingの応援よろしくお願いします。本大会でもHMR Racingの横断幕ありがとうございました!! HMR公式Youtubeチャンネルにてレースの様子を公開しておりますのでぜひ見てください!