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更新日時:2023/04/10

【スーパー耐久2023 開幕戦 鈴鹿】新たな体制で臨んだ開幕戦のレポート


HMR(エイチエムアール)のイシケンです。2月の富士合同テストから約1カ月。いよいよ今シーズンのスーパー耐久レースが開幕しました。3月19日(日)決勝5時間レースです。今シーズンは体制発表の通り、MCRさんに協力してもらってマシンのセットアップを煮詰めてレースに臨みます。そして、ドライバーには佐々木孝太選手率いるKota Racing所属の2名のドライバーを迎えて戦っていきます。
そんな体制での初戦が先日行われましたのでレポートします。

16日の練習走行

16日の木曜日から積極的に走り込みました。まだ木曜日はピット設営をしているチームやそもそも来ていないチームもあり、一番空いている中で専有走行ができる日です。この日は今回から新しく導入したTEINダンパーと新たなLSDのフィーリングチェック&セットアップが主なメニューでした。午後12時15分から1時間のセッションがまずスタートし、ドライバーは私からスタートしました。走り出しからとてもいいフィーリングで、いきなり2分25秒台をたたき出し、中古タイヤにも関わらず前回の最終戦鈴鹿の予選タイムを2秒も上回ってしまいました。それでもまだ煮詰めたいポイントはあり伸びしろがまだまだある状態だったので、初日からかなりの手ごたえを感じていました。
その後Bドライバーの川原選手に変わって走行して同じく良いフィーリングの中終わりました。

セッション2ではセッション1で少しアンダー気味だったところの修正でダンパーセットの変更と車高を変更して臨みました。川原選手からスタートし、アンダーは改善傾向にあるとのことで、方向性はこのままにダンパーセットを煮詰めていきました。 その後私にまたチェンジして細かい煮詰めを行いセッション2を終えました。主にこの日はダンパーの減衰力調整でアンダーやオーバーの調整をしていった感じでした。セッション2では、ほぼ終わりかけのタイヤにも関わらず2分27秒から28秒くらいでコンスタントにラップ出来ていたので、セット的には悪くなさそうと言う感じでこの日を終えました。

翌日の専有走行に向けては、更に煮詰めるべくメカニック達がセットアップを施してくれました。ただ、何をやったかはこの日にはドライバーには内緒とのことで、純粋なドライバーからのフィードバックを期待したいとのことでした。

17日の練習走行

レースウィーク2日目の17日。この日は午前中にST3~5クラスのみのグループ2の専有走行が1時間と午後に全クラス混走の2時間の専有走行が予定されていました。この日からCとDドライバーの妹尾選手、奈良選手も合流し、昨日セットアップしたフィーリングをチェックしてもらう感じです。

最初のセッションではNEWタイヤでの予選アタックのシミュレーションもやっておきたかったため、まずは中古タイヤで昨日施したセットのフィーリングチェックから入りました。 ドライバーは私です。昨日よりも更にアンダーステアが消えている感じでフィーリング的にはいい感じでした。若干ブレーキが効かなくなったなという印象だったので、きっと内緒だよと言っていたセット変更はフロントキャンバーを増したのでしょう。

数周走ってピットインし、NEWタイヤに履き替えてフィーリングチェックに入りました。これまでのベストタイムとなる2分25秒407をマークし、まずまずのタイムを記録できました。ただ、個人的にはこの時点で24秒台には入れておきたかったのでNEWタイヤでの伸びが少ししかないなという印象でした。 

このままBドライバーの川原選手に変わって2周ほどフィーリングチェックしてもらい、その後Cドライバーの妹尾選手に交代してセッション1を最後まで走ってもらいました。妹尾選手はこのセットでの鈴鹿初走行ということで、まずはじっくりとマシンと対話しながら着実に走行を重ねていました。S耐の経験は豊富な妹尾選手ですが、いきなり無理をせずにじっくりとマシンを理解していくところは流石でした。

午後のセッション2に向けては、リアの車高を調整して前後バランスさせて臨みました。メニューとしては決勝想定で各ドライバーが30分ずつ走るプランで行きました。ただ、この前に車検があったのですが、混み過ぎていて走行開始5分前にようやく戻ってくるというかなりバタバタな感じでスタート。走り出しは10分ほど遅れてしまったため、もうちょっと車検場も余裕をもって進めてほしいところです。
そんな感じでスタートしたセッション2は、ガソリンはフル満タン状態で午前中に履いたタイヤのまま私からスタートしました。リアの車高調整はとてもいい感じで、ガソリンが重い状態でのフィーリングも良好でした。そのフィーリングが確認できたので、早めに川原選手に交代して、それぞれのドライバーが決勝想定での走り込みに徹してもらいました。
特に奈良選手はこの午後のセッションが初走行というだけでなく、鈴鹿自体が初の走行ということで、緊張しながらも着実にマイルを重ねていきました。特に大きなトラブルもなく全てのメニューをこなして17日の専有走行が終了しました。

この日はみんなで焼肉でも食べに行こうとサクサクと終了後のメンテナンスを進めていたのですが、ミッションオイル交換時に破片がオイルと一緒に出て来てしまい、ここでミッション交換となってしまいました。このタイミングで良かったのですが、みんなで楽しく焼肉に行くことができなくなり残念でした。
実は、セッション2の始まりの時にミッションに少し違和感を感じていたのです。ミッションオイルが温まっていないだけかなとも思っていましたが、適正な温度域になってもフィーリングはそこまで変わらなかったため、予選が終わったくらいで交換しようと伝えるつもりでした。そんなこんなでこの日は遅くまで作業が続きました。

18日の公式予選

いよいよ公式予選当日です。前日から雨が降り続いて止んだのは11時くらい。午前中に1時間のセッションがあったのですが、ここは昨日載せ替えしたミッションのフィーリングチェックとオイル漏れチェックに留め、奈良選手のFCY&SC練習だけという感じで15分くらいで終えました。
ピットウォークではこの鈴鹿戦のスポンサーをしていただいているBodixブランドのビューティーガールズに来てもらい、これまでで一番華やかな雰囲気になりました。土曜日から観戦に来られている方も多くてコロナから回復しつつあるのをとても感じました。

そして、ピットウォークが終わってもまだ小雨が降り続いている状態は変わらず、止んだのは12時過ぎという感じでした。14時の予選開始時には、乾きつつあるものの微妙な路面でした。そんなこともあって急遽Aドライバー予選からBドライバー予選からに変更になりました。Aドライバーはジェントルマン枠で、Bドライバーがプロが乗っているケースが多いため、路面コンディションを考慮してそのように変更されました。

ということでいきなり走ることになった川原選手ですが、いつも通り余裕な感じ!タイヤはもちろんDRYです。ほぼ見た感じでは乾いているのですが、もしかしたら少しWETのところがあるかもと言うので、最初のラップは慎重に走り出すようにとのチームからの指示。でしたが、結構いけるということがわかり、いきなり24秒台の好タイムをたたき出して、グループ2の中でも上位にランクインしました。珍しく場内TVにも映し出されていました。そして、走行を続けること4ラップ目に2分23秒962をマークして、いっきにジャンプアップ。この時点では同じクラスの中でも2位の位置にいて、ピットでは大盛り上がりでした。最終的にはBドライバー予選をクラス6番手となりました。GR86勢にも肉薄するタイムでかなりの好ラップでした。

こんなタイムを叩き出したものですから、Aドライバーの私にかかるプレッシャーは半端ない感じ。ここまでのレースウィークでも常にいいタイムを記録してきていただけに、私に期待するチームの雰囲気をすごく感じました。MCRの小林代表から何ラップ目で出す?って聞かれて、4ラップ目に合わせて下さいと伝え、そこに内圧がバシッと来るようにセットして送り出してもらいました。
そして、見事4ラップ目に2分23秒805を叩き出して、Aドライバー予選を5番手で終えました。まだタイムアップしそうだったのでその後も走っていたのですが、ヘアピン立ち上がりでシフトミスしてしまい終了でした。あと0.5秒は縮められる感じでしたね。
ABドライバー合計の予選では、クラス5番手を獲得できました。8台中5位ということで、GR86だらけの中ではかなりいい予選結果となり、チームは大盛り上がりでした。

この日の夜は決勝に向けての最終メンテナンスとドライバー交代の練習やピットイン時のメカニック達の練習に時間を割き、マシンのセットは何も変更せずに決勝へと臨みました。

19日の決勝

決勝日はとてもいい天気で、このレースウィーク通しても一番気温が上がる予報でした。10時くらいから決勝前ピットウォークがあり、天気がいいこともあって昨日よりも更に多くの方々が来ていました。Bodixビューティーガールズもいっぱい写真を撮ってもらっていましたね。やはりレースクィーンがいるといないとではピットに立ち止まる人数が違いますね~。

さて、そんなピットウォークは終わりいよいよ決勝前の緊張したムードになってきました。スタートドライバーは私からです。コースオープン10分前にはマシンに座って気持ちを整え、コースオープンと同時にコースインして行きました。1周じっくりとタイヤを暖めながらも無駄にガソリンを使わないように低回転で走行しグリッドにつきました。
グリッドではスタート前の恒例の集合写真を撮り、速めにシートに座ってスタートを待ちました。今回の勝敗の分かれ目は1、2コーナーで前を走る86号車トムススピリットのGR86を抜けるかどうかにかかっていました。スタートドライバーは向こうもAドライバーのジェントルマンで、タイムではこちらの方が速い感じです。特に1セクターはこちらが速いため、抜いておかないと詰まってしまって全くペースが上げられなくなります。ここが勝負どころだと思いフォーメーションラップに入りました。

1周回って来てスタートライン手前でピッタリと横について加速では負けるので少しでも早めにアクセルONでついていけるようにと踏み込んでいきました。がしかし、86号車はスタートライン手前でなんとアクセルOFF・・・。抜いてしまうとペナルティなのでこちらもアクセルOFF。そこから加速という感じでパワー差を意識した戦略を取られて万事休す。1コーナーまでにビタビタで行ってアウトから被せて3コーナーまでに抜くという想定が全て狂い、アクセルオフしてしまった関係で後ろから来るロードスターにインを突かれそうになって閉めないといけない状況でした。
なんとか後ろは抑えたもののとても前を抜ける状況ではなく、S字にそのままの隊列で入っていったら案の定こちらの方が速いためかなり減速しないといけない状況となってしまいました。でもS字で抜くのは絶対に無理なので合わせるしかなく、そのままヘアピンまでゆっくりとついていくしかない状況。ヘアピンを立ち上がると今度はパワー差でGR86はグングンと離れて行き、スプーン立ち上がりでもグングンと離れて行き、また1コーナー2コーナーあたりで詰まりというのを繰り返すことになってしまいました。
そんな状況なので後ろから来ていたGR86やロードスターには抜かれてしまい、ずっと86号車とのバトルをする展開となってしまいました。

数周後に86号車を抜くことが出来てようやく自分の思い通りに走れると思っていたのですが、早くもタイヤがタレてきてしまいました。想定以上の気温・路温になっていることはすぐに想像がつきました。そして、なぜかミッションが入り辛くヘアピン立ち上がりではシフトミスの連発・・・。 そんなことをしていたら抜いたはずの86号車がまた迫って来て、今度は130R手前や1コーナー手前でブロックしないといけない状況になってしまい、タイムは2分28秒台とかなり遅い状況でした。レース開始から40分経過したころまでそんな状況が続いて、ミッションが入らない、トラクションがかからないという感じで、室内はとても暑いために身体の疲労も激しくなってきていました。シフトチェンジする左腕は上がらなくなってきて、首も横Gで支えられない状況となり、ハコ車でこんな経験をするのは初めてで、とても90分の1スティントを終えられる状況ではないと思いながら気合で走っていました。

そんな中、ふとミッションとデフのオイルポンプに目をやると、なんとオイルクーラーがOFFのままでした・・・。スタートして5周くらいでONにする予定があまりに接近戦だったためにONにするのを忘れていたのです。すぐにONにしたらミッションもデフも温度が下がってスムーズにミッションは入るし、トラクションもかかるようになりました。そして何よりもミッションからの熱にやられて熱中症状態だったのが、気持ち涼しくなって楽になりました。全てはこのせいでペースが上がらなかったのかと理解できました。

ただ、もう体力はあまり残っておらず、タイヤもかなり消耗してしまっている状況で、ペースが上げられるかというと全く上がらずで走るのが精一杯という感じでした。そんな中ついにやらかしてしまいました。レース開始から約1時間のところでシケイン立ち上がりで少し膨らんで、アウト側の縁石に乗りながら加速していったら、縁石の切れ目の段差に乗ってジャンプしてしまい、着地でそのままスピン。。。
なんとかコントロールしようとおつりをくらいながらもがきましたが立て直せず、そのままメインストレート前のアウト側のグラベルに突っ込んでいきグラベルに埋まりました。マーシャルに回収されるまでに2ラップほど失ってしまい、ここで完全に勝負権を失うこととなってしまいました。

回収された後はまだFCY走行中だったためゆっくりと50kmでマシンの状態をチェックし、砂利をレコードラインに落とさないようにうまくマシンから砂利を落として行きました。スピンして少し休憩できたこともあり、身体は回復してタイヤも冷えてグリップが戻ってきていました。FCYが解除された後は結構ペースが上げられそうなフィーリングでしたが、その後すぐにSCが入ったためここでドライバー交代となりました。予定ではBドライバーの川原選手にバトンタッチでしたが、予定を変更してCドライバーの妹尾選手に交代しました。私は28周を走行しました。この時点では同じクラスで2台がマシントラブルで戦線離脱していたので、走っているマシンでは最下位のクラス6番手でした。予選からは1つしか順位は下がっていないのですが、前との差が開きすぎてしまいましたね。

そして、順調に走行を続ける妹尾選手のラップモニターを見ていたら、あれ?ドライバー名がISHIKENから変わらない。というのに気づき、もしかして計測器入れ替え忘れたのか!?みたいな感じでピットがざわつきました。妹尾選手の計測器はしっかりとマシンに入っているのを私が降りるときに確認したのですが、私の計測器がどこにも見当たらないということに。そうです。スピンした時に私の計測器がポケットから落ちてしまってマシンのどこかに飛んで行ってしまっていたのです。妹尾選手は計測器入れが空っぽだったのでそのまま自分の計測器を入れ、マシンの中には2つの計測器がある状態となってしまいました。。数周はドライバーチェンジしたにも関わらず表示はISHIKENのままとなり、このままだと一人のドライバーの最大走行時間を超えてしまう問題に直面するという感じでした。そんな心配をしていたところで、計測が妹尾選手を読んでくれて切り替わり一安心。オフィシャルからは次のピットイン時に計測器を回収するようにとのお達しくらいで済みました。

妹尾選手は27秒~28秒台で順調に周回を重ねて走り、61周でピットインしました。続いてDドライバーの奈良選手に交代。新品タイヤに履き替えて60Lの給油を済ませてコースインしていきました。今回からピットインしている制限時間が作業が終わるか終わらないかギリギリくらいの時間に設定されていましたが、前日から練習してきたかいがあって時間内でロスなく交代できました。

奈良選手は初めてのS耐決勝ということで、そこまでペースアップすることは難しかったですが順調にラップを重ねて行き、SCが出た78周にピットインして再度妹尾選手に交代しました。このピットインではスプラッシュで20Lのガソリンだけ入れてドライバー交代して送り出しました。ここも素早いピットで送り出せて、その後は26秒台のベストラップを刻むなど乗りに乗った走りでエンドレスのGR86もコース上で抜きクラス5番手まで戻り、この先何かあったら上位も狙えるのではとピットでは大盛り上がりでした。

そんな中、88周目にST5クラスのトップ争いで大クラッシュがあり赤旗中断。 レースは残り45分を残して終了となりました。クラス5番手とスピンしたにも関わらず予選と同じ順位でゴールできたのは良かったですが、あのスピンがなければ3位表彰台も見えていたかもしれなかったので悔しい結果となりました。ただ、GR86に肉薄する走りをZN6型でもできることがわかり、今年はチーム力も上がっているのでとても面白そうな1年になりそうだなと実感しました。

今年はGR86を投入予定なので、これでGR86になったらもっといい勝負ができるのではないかと思う結果でもあり、とてもいいスタートが切れた開幕戦でした。
次戦は富士24時間ですが、うちのチームは欠場するので次は7月のSUGO戦になります。それまでの間にGR86の制作に時間を充てて、SUGOはZN6でいきますがもてぎくらいにはGR86を投入出来たらなと思って進めていきます。SUGOはストレートが短いため、鈴鹿よりもZN6型での表彰台チャンスがあると思っています。ここもしっかりと上位を狙って戦っていきたいと思うので、次戦も応援よろしくお願い致します。

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