更新日時:2024/05/30
HMR(エイチエムアール)のイシケンです。5月25日~26日にかけて開催されました富士24時間レースの様子を書きたいと思います。スーパー耐久に参戦して今年で3年目ですが、これまで24時間レースへの参戦は控えていました。チーム運営もままならない中で24時間戦うことは事故や怪我につながる可能性もありますし、他のチームへ迷惑をかけてしまう可能性もあります。そのような理由で2年間は参戦をしてきませんでしが、今年はレース運営面も問題なく戦えるようになってきたため参戦を決意しました。
自分達で作ったGR86の新規マシンのロングテストも24時間に参戦することで可能なため、今後のマシン開発のためにこの24時間レースにチャレンジする意味はとても大きいと思っていました。
24時間レースの目標は完走です。前戦のSUGO大会では3分前にガス欠になってしまってチェッカーを受けれずでしたので、這ってでも完走をしたいという気持ちでした。そして、ただピットで待機して完走を待つという状況ではなく、レース距離をしっかりと走って完走をしたい!そのような気持ちでチームメンバー全員で取り組んだレースでした。
まず始めに、24時間レースを戦うドライバーを紹介します。
AドライバーはKENBOW選手。久々の24時間レースを戦ってもらいます。Aドライバーは最低乗車義務時間が決まっていて、今回は3時間26分です!
Bドライバーはプロドライバーの佐々木孝太選手。佐々木選手は2年ぶりの富士24時間レースとのこと。レース運営面含めてチームを引っ張って行ってもらう存在です。
Cドライバーはこちらもプロドライバーの妹尾智充選手。昨年からHMR Racingで走っている妹尾選手はメカニック達との連携もバッチリ!若手なので夜間にいっぱい走ってもらう予定です。
Dドライバーはこの24時間レーススポット参戦となるNAORYU選手。以前はトレーシースポーツからスーパー耐久に参戦していたこともあるベテランドライバーですが、本格的なレースは8年振りです。
基本的にはこの4名のドライバーで回していきますが、一応私もEドライバー登録だけして表彰台に上がるようなことがあればちゃっかり登ろうと思っています♪
22日の水曜日は決勝レースで使う部品の慣らしをメインに行いました。ドライバーは私が担当して、ブレーキローターを2セット、ミッション、そしてエンジンの慣らしを午前中の走行枠を使って行いました。慣らしをやりつつ、5月8日の合同テストで導入した新たなLSDの仕様変更をしてきたので、そのフィーリングチェックも同時に行いました。
各部慣らしながらの走行なのでもちろん全開走行は出来ないのですが、それでもこれまでとは明らかに違うマシンの軽さを感じました。これはLSDの仕様変更が効いていて、とてもスムーズにノーズが入ってくれてとても曲がりやすいのと、変な抵抗がなくて車全体がスムーズに加速していくイメージでした。そんなこともあり、慣らしで走っているにも関わらずとてもいいタイムで周回できました。
翌日の23日木曜日。この日は公式セッションが午前中と午後にそれぞれ90分設定されており、ここから各ドライバーに合流してもらって本格的な練習走行とセットの煮詰めを行っていきました。午前中のセッションでは仕様変更してきたマシンのフィーリングを各ドライバーに確かめてもらうべく、それぞれのドライバーに乗ってもらい評価をもらいました。どのドライバーからもノーズの入りがとても良くなって運転しやすいと高評価をもらいました。
そして、さらに煮詰められる箇所がないかをダンパーのセット変更で試すべく、佐々木選手と妹尾選手メインに行ってもらい午前中の枠を終了しました。午後は燃費を計測したかったのでロングのテストを実施しました。プロ枠のドライバーの燃費とKENBOW選手とNAORYU選手の燃費をロングで計測していきました。想定していたよりも燃費がよく、決勝レースのスティントも少し変更になるくらいでした。ラップタイムについては、2分フラット~2秒くらいという感じでしたが、ずっと400kmオーバーの中古タイヤを使って走っていて、NEWを温存していました。
というのも、24時間レースで購入できるタイヤの本数が決まっていて、使っていい本数に縛りはないですが、購入本数に縛りがあったため、出来る限り決勝にNEWを残しておこうというので、ひたすら中古タイヤで走ってきました。この日も特に何もトラブルなく全てのメニューを消化でき、順調にレースウィークが進んで行きました。
普段のレースでは土曜日に予選、日曜日に決勝なので金曜日まで練習走行があるのですが、24時間レースでは金曜日に予選となります。午前中は特に何もなく午後から予選でした。この予選で初めてNEWタイヤを履くので、この走りやすいセットアップでNEWタイヤの組み合わせでどこまでいけるのかがとても楽しみでした。
Aドライバーから始まった予選は、インラップ含めて2周目でタイム出しをしようと空気圧もそれに合わせていきました。今回のピットが7番とピットエンドからはかなり離れていることもあり、ST5クラスに詰まる可能性を考えて7分ほど空けてからコースインしました。他の車両がアタックを終えてきたくらいでコースインできたため、スムーズにアタックラップには入れました。それでも第3セクターで詰まってしまってタイムロスとなり、予選タイムは2分00秒955と伸び悩みました。
この詰まってしまったのも原因ですが、軽い燃料とNEWタイヤの組み合わせがどうも今のマシンセットには合っていなかったらしく、リアのトラクション不足が出てしまっていました。
Bドライバー予選に向けてフロントスタビをハードに変更して、リアのトラクション不足を少しでも解消する方向で佐々木選手にアタックしてもらいました。このアタックでもやはり他のマシンに引っかかってしまって思うようなアタックができずでしたが、それでも1分57秒893というタイムを出していただきました。このタイムはシェイドレーシングやエンドレスとコンマ数秒の差でしたので、マシンは確実に速くなってきているのが実感できました。
そしてCドライバー予選ではもっと違うセットを試してみようという事で、車高を調整して妹尾選手にアタックしてもらいました。ただ、このセットは全然ダメで1分59秒558というタイムに留まるのみとなってしまいました。
続くDドライバー予選はこの車高を戻してリアのスタビをハードに振ってNAORYU選手にアタックしてもらいました。これもあまり良くなくNEWタイヤのフィーリングを全く感じなく、昨日まで使っていて400kmオーバーのタイヤと変わらないかむしろそっちの方が良いくらいなフィーリングとなってしまいました。
最後のEFドライバー用のフリー走行枠が用意されていたので、前後ハードのスタビ向けのダンパーセット出しを私が担当しました。乗ってみるとリアがかなり硬い印象で、ダンパー減衰を落として行きましたがそれでもNEWタイヤらしいグリップ感のあるフィーリングは感じませんでした。
結果的には昨日のセットに戻して決勝はスタートすることになりました。NEWタイヤ向けのセット出しに時間を使えなかったので仕方ないですが、ロングは悪くないので24時間レースを考えたら悪くないでしょう!と前向きに考えて予選は終えました。予選の結果はクラス6番手からのスタートとなりました。
予選後、決勝レースに向けてアーム類、タイロッド、ハブベアリング、ドライブシャフト、ミッション、ブレーキローター&パッドを新品に交換し、各部油脂類の交換を済ませました。不具合が発生してよく交換が必要になる部品は全て新品に交換して決勝レースへと臨むこととなりました。
いよいよ迎えた決勝日。天気は曇りで夜にかけては天気が崩れそうな予報でした。午前中にウォームアップ走行があり、戻したセットがしっかりと出ているのかをチェックして、KENBOW選手とNAORYU選手に乗ってもらってウォームアップしてもらいました。その後ピットウォークを挟んでグリッドへ!
24時間レースはグリッドウォークの時間もたっぷりと設定されていて、グリッド上で待つ時間が長いね~なんて話していたらトラブル発生!!グリッドについたマシンからガソリンがドボドボと漏れてくる・・・。ここまでノートラブルで来たのにスタートできないのか!?っとメカニック全員があたふたしましたが、実はこれはあるあるらしく、燃料を満タン入れてグリッドつくと熱膨張でエア抜きホースからガソリンが吹き返してしまうそうです。そのガソリンが漏れ出てしまっただけで、ある一定量出たらそれ以上はもう出ないとのことで、オフィシャルにも確認してもらってグリッドからのスタート許可をもらえました。でもかなり焦りました。。。
そんなガソリン漏れるトラブルは何事もなく終わり、グリッド上ではみんなで記念撮影!!スタートドライバーのKENBOW選手は初めてのスタートドライバーということで、ただでさえ緊張する24時間レースのスタートなのに初というのは心中お察ししますという感じです。このグリッドに居る時間がなんとも言えないんですよね。スタートドライバーって・・・。
そしてフォーメーションラップを挟んで25日の15時に24時間レースがスタートしました。KENBOW選手は初のスタートドライバーでしたが無事にスタートを切り、安定してラップを刻んでいきました。やはりリアのトラクション不足が気になるようでしたが、24時間の長い戦いなので無理はせずにマシンを労わりながら1時間半のスティントを走り切ってくれました。この時点で順位はクラス最後尾でしたが、自分たちのペースで走ることを意識していましたので全く問題ありません。
続いてDドライバーのNAORYU選手に交代し、タイヤも4本新品に交換してコースイン。8年振りとなる決勝に少しは緊張しているかなと思いましたが、さすがはベテランドライバーなだけあり乗り込む前からとても楽しそうな感じでした。そして走り出しから安定したラップを刻み、ガソリンが軽くなるにつれてラップタイムも上がりとても8年振りとは思えないほどいい走りをしてくれました。
スタートから3時間ほどが経過したところでBドライバーの佐々木選手に交代しました。ここからBドライバー→Cドライバーとつないでいくので少しペースアップして順位を上げて行く予定でした。しかし、佐々木選手に交代してコースインしたその周にドライブシャフトが折れてしまいました。ピットインした際にドライブシャフトの熱が上がりポキっと折れるというの86ではよくあることで、このタイミングでそれが出てしまいました。緊急ピットインをしてドライブシャフトを交換。7分ほどでコースに戻すことが出来ましたが、今度はスピードが出ないという無線が・・・。どうやらVVTiが作動していない様子。ドラシャ交換でピットインの際キルスイッチでエンジンを切ってしまっていたようで、VVTiの学習がリセットされてしまっていました。
その関係でまたもピットインをすることとなり、VVTiの学習をさせてから再びコースインすることになりました。この緊急ピットインを繰り返したことで5LAPほどの周回遅れとなってしまいました。それでも、24時間レースなのでまだまだ挽回のチャンスはあります。もちろん諦めずに上位を狙って走行を続けました。
その後は特にトラブルは発生せずに順調に周回を重ねてCドライバーの妹尾選手にバトンタッチ。ちょうどこのタイミングでヘアピンでは24時間レースの名物でもある花火が打ちあがりました。ピット内でも用意していた飛騨牛と九州の地鶏を焼いてみんなでワイワイと食べながらレースを楽しんでいました。(妹尾選手、走行中にごめんなさい!)
その後も特にトラブルはなく安定したラップを刻んで1時間半のスティントを終えてピットイン。給油とタイヤ交換をしてドライバーはそのままで2スティント走ってもらいました。2分1秒くらいの安定したラップで2スティント目も走行し、218周を走行したところでDドライバーのNAORYU選手に交代しました。ここではタイヤはキープで給油のみでピットアウト。夜の23時くらいでしたがこの辺りから天気が崩れ始めてきて雨が降り始めてきました。スリックタイヤのため難しいマシンコントロールとなっていて、クラッシュしてはいけないので15周ほどでピットに戻ってもらってBドライバーの佐々木選手にチェンジしました。
雨はその後も降り続くもののずっと霧雨という状態。雨雲レーダーには特に映っていなく、WETタイヤに履き替えた方がいいのかDRYタイヤのままでいいのか難しい状況でした。ただ、うちのマシンはセットが煮詰まっていなくてトラクション不足になやんでいることもあったため、早めにWETにタイヤに切り替えることにしました。トータルで2時間ほどのスティントを終えて、Cドライバーの妹尾選手へバトンタッチ。NEWのWETタイヤでコースインしました。他のマシンの多くはDRYタイヤのままで走っていて、うちはWETで同じタイムという状況で、これを見てもうちのマシンはまだ完成度が低いなというのが良くわかりました。
このような難しいコンディションの中でも妹尾選手はトップグループと同じタイムを刻み、またしても2スティント走って1人の連続走行時間が3時間までというレギュレーションのギリギリまで走り続けてもらいました。この間に同じクラスの#60 G’MOTION GR86がダンロップでクラッシュしたり、#66 TONEロードスターRFが他車とのクラッシュが発生したりと順位を落とし、クラス5番手を走行していました。
4時36分頃にピットインしてここで10分のメンテタイムを実施しました。20時間経過するまでに10分間のメンテタイムを入れるというのがレギュレーションで決まっていて、ここで前後のブレーキローター、パッド、エンジンオイルの交換を予定していました。ただ、ドライブシャフトも心配だったため、急遽ドラシャも交換することにしました。ピットタイムは約12分くらいかかりましたが、どこかで止まってしまうよりは2分くらいの遅れは何てことありません。
メンテタイム後はDRYタイヤでBドライバーの佐々木選手がドライブ。スティントの前半はまだ路面がWETコンディションでしたが、その後はDRYコンディションに変わっていき上位グループよりも速いタイムで走ることもしばしばあり、さすがという走りを1時間半してくれました。完全にDRYタイヤで走れるコンディションになったところで、AドライバーのKENBOW選手へ交代。2秒~3秒台のラップで1時間半のスティントを無事に走り終え、DドライバーのNAORYU選手へとバトンタッチ。NAORYU選手もマシンを労わりながら3秒~4秒くらいのラップで周回してBドライバーの佐々木選手へとバトンタッチしました。
NAORYU選手が走行中に、4番手走行中の#18 Wed’s sport GR86がメンテタイムを消化していて、10分以上の長いメンテタイムをとったこともあって、その差は1LAPまで縮まっていました。ここから佐々木選手がペースアップをして#18を追っていく展開に。#18をドライブしていたのはプロではなかったこともあり、その差は周を追うごとに縮まっていき、ついには同一ラップにまで追いつくこととなりました。
その後Cドライバーの妹尾選手にバトンタッチして再び#18を追う展開に!ただ、このピットインの際にマシンに不安な箇所があってチェックしたこともあり2LAP差に。その後妹尾選手の走りで1LAP差までは縮めたものの、それ以上は難しくAドライバーの最低乗車義務時間の消化もありKENBOW選手へと交代しました。
交代したKENBOW選手からすぐに真っすぐ走らない!!という無線が入りピットは騒然としました。佐々木選手がドライブしていた時から少しこの挙動は発生していたため、突然壊れるようなものではないから最低義務時間だけも消化してもらおうとペースを落として走行することとなりました。
義務時間を消化したタイミングでピットインして各部チェックしました。フロントのロアアームのナットが緩み始めているのが原因で、増し締めをして再度コースイン。佐々木選手にドライブしてもらい、残り50分くらいでチェッカードライバーとしてDドライバーのNAORYU選手にバトンタッチ。
最後の最後までマシンを労わり安定した走りを披露してくれて、26日の15時、640周を周回して無事にチェッカーを受けることができました。
チェッカー後はピットロードを逆走して全チームが出迎えるという24時間レース一番の醍醐味も味わうことができ、24時間初出場でしっかりと完走できた喜びは大きかったです。ドライバーの皆さんには色々と我慢してもらいながら走ってもらい、順位は5番手で上位との周回差も大きい状況でしたが最後まで諦めることなく力走してくれました。
メカニックやマネージャーも24時間戦い続けてくれて、どれだけ壊れても絶対に直してコースに送り出す、チームのサポートを24時間頑張るというチーム一丸となって取り組んだ結果だと思います。
私は24時間ずっと燃費の計算でエクセルと戦い続け、ピットインのタイミングやタイヤどうするなどなど、全く寝ることもなく戦い続けました。(1分くらい落ちましたが・・・)
終わった時はもうこんな過酷なレースには参加したくないと個人的には思いましたが、終って数日経つと不思議とまたチャレンジしたいと思うようになり、メカニック達も来年はここを改善しておこうとかもう戦う気満々な感じでした。
来年の24時間レースはより上位を目指して壊れないマシン作りをして臨みたいと思います。今回のレースで弱い部分がよくわかり、今後のマシン開発の方向性もかなり明確になりました。
次戦は7月末のオートポリスになります。そこまでに改善できるところは改善して、表彰台目指して乗り込もうと思います。
今大会も24時間ヘタらない足回りを支えていただいたTEIN様、24時間戦えるオイルをサポートいただいた和光ケミカル様、24時間戦い続ける強いホイールをサポートいただいたENKEI様、24時間走り続けられるクラッチをサポートいただいたセラメタ様、24時間走っても破損、損傷のないエアロパーツとエキゾーストをサポートいただいたパワークラフト&プロコンポジット様、24時間いつでも綺麗に清掃できるホイールコーティングをサポートいただいたACOAT様、24時間戦い続けるレーシングギアをサポートいただいたHPI様、応援いただいたファンの皆様、ありがとうございました!
次戦もHMRのチャレンジは続いていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!