更新日時:2024/11/27
HMR(エイチエムアール)のイシケンです。スーパー耐久シリーズ2024も11月17日にいよいよ最終戦富士を迎えました。今シーズンはGR86を自社でレースマシンに仕立てて戦ってきました。初期トラブルとの戦いからそれが落ち着いたらマシンセットとの戦いというずっと苦戦続きでした。前回の岡山ラウンドでは持ち込みのセットが良かったのに、そこから上げることができずに終わり悔しい思いをしました。この富士に向けては多くのことは出来ませんでしたが、各部のメンテナンスとインマニの断熱処理を施してサーキット入りしました。
レースウィークの水曜日13日のスポーツ走行からセット出しをしていきました。岡山である程度マシンセットの方向性が見えていたので、その組み合わせで何がベストかを水曜日のスポーツ走行を使ってセット出しを行い、木曜日からはドライバー自身の走りに集中できる環境を作る方向で進めました。この日は佐々木選手メインで乗ってもらってセット出しを行い、もてぎから投入しているボディダンパーを外してみたりつけてみたり、スタビを純正にしたりハードにしたり、時には外したり。車高を変えたり、バネレートを変えたりといくつものパターンをテストしてみました。結果、凄く乗り易くて扱いやすいセットを見つけることが出来ました。簡単に言うとこれまでは硬すぎたということです。そのため路面の良いサーキットやコンディションの時はポッとタイムが出るけど、路面状況の変化ですぐにダメになってしまう。タイヤもNEWならいいけどすぐに落ちていくというのはそう言うことだったのだと思います。これが最終戦でようやくいい組み合わせが分かりました。
木曜日からはドライバーは全員揃うので、水曜日に出したセットをまずは乗ってもらってそれぞれコメントをもらいました。今回、Dドライバーに吉田隆ノ介選手を起用しました。昨年のGR86BRZワンメイクレースクラブマンクラスのシリーズ2位の選手です。まだ若手ですがS耐のチャンスを与えました。いい走りを期待したいと思います。
午前中に2本の走行枠があり、そこで妹尾選手と吉田選手に乗ってもらいました。2人ともとても乗り易いとのコメントで、特に何も不満はないとのことでした。そこで、もう少しだけ煮詰めるために佐々木選手に乗ってもらってバンプラバーの仕様違いのテストをしました。いくつかのラバーを組み合わせて使っているのですが、その組み合わせの中でも比較的柔らかいパターンが良さそうでした。この組み合わせで吉田選手にロングを走ってもらって、燃費のデータ取りと内圧変化のデータ取りを行いつつ、吉田選手にはマシンに乗り慣れてもらいました。タイムは1分58秒~59秒くらいでラップしており、他のマシンと比較してもラップペースは悪くなくむしろ良いのではという感じでした。まだスポーツ走行枠なので完全に他車のラップを計測することは出来ませんでしたが、可能な限り計測した結果では良さそうでした。
午後からはAドライバーのKENBOW選手が合流。午後はKENBOW選手のマシンに慣れることに集中してロングで走ってもらいましたが、途中から雨が降ってきてしまって早めに切り上げることとなりました。
金曜日は専有走行枠が2本ありましたが、この日は完全にWETでした。予選決勝もまだ微妙な天気ではあったため、WET路面のセットも確認しておくために、最初の1枠だけは走行しました。主にダンパーの減衰力調整とスタビのセット変更を試してみました。それと、中古のWETタイヤとNEWのWETタイヤの比較も行い、雨量でどのくらい変化があるのかも確認することができました。
午後の走行枠は雨は上がったが霧が出てしまいディレイからの中止になってしまいました。S耐参戦してから今までで一番早く1日を終えることができました。
昨日誕生日だった吉田選手のお祝いも出来て良かったです♪
土曜日は雨も上がって霧もなく気持ちよく走れそうな天候でした。午前中に35分のウォームアップ走行があり、ここで予選前の最後のシミュレーションをしました。KENBOW選手のタイムは1分58秒238。佐々木選手に変わってアタックし、タイムは1分57秒139。56秒台は余裕で出ると思っていた中ではちょっと遅いなと・・・。ドライバーからのコメントではグリップ感が低くなっているとのこと。昨日の雨でラバーが流れてしまって路面コンディションが悪そうなので、ダンパー側でもう少し柔らかいセットを試すなどしてみました。
そして午後からの予選。AドライバーのKENBOW選手からのアタックです。インラップ1周、ウォームアップ1周してアタックに入りました。計測したタイムは1分58秒362。もう1ラップ行き1分57秒525。当初の予定ではこれで終わりでしたが、もう1周行ってくれと無線を入れてアタックしてもらいました。セクター1、2と自己ベスト刻み、この勢いならベスト更新!!って思っていたところで#19weds sport GR86のマシントラブルに引っかかってしまって大きくセクター3でロス。タイムは1分57秒569でした。0.5秒近く失ったのはかなり痛かったですが、Aドライバー予選は3位でチェッカーとなりました。
続いてBドライバー予選。佐々木選手の懇親のアタックで1分55秒873をマーク!Bドラ予選2位のエンドレスGR86とは0.07秒差という僅差でした。佐々木選手も少し失敗したとのことで、一度ピットインして再度アタックに入りましたがベストを更新することはありませんでした。Bドライバー予選も3位となり、ABドライバー合算タイムでクラス3番手からスタートになりました。2番手とのタイム差は合算でも0.02秒差ということで、Aドラ予選で引っかかることなくアタックで来ていたらもう一つ上には行けていました。また実は、ブレーキローターがもう完全に終わっていて交換したかったのですが、決勝用にしかスペアを持ち合わせていなかったため予選は終わっているローターで臨んでいました。この結果、1セクで0.5秒はロスしていることが分かったので、ローターが新しければポールも狙えたのかなと思うと、マシンは最終戦になってようやく仕上がったかなという感じでした。
その後のCドラ予選では妹尾選手に決勝ロング用のマシンチェックをしてもらいました。ガソリンを決勝用に積んだ状態で走ってもらい、ロングでの燃費と内圧変化のデータを取りました。そしてDドラ予選では吉田選手に決勝用のブレーキパッドとローターの焼き入れをメインに行いながら、決勝用のダンパーセットを少し試すことが出来ました。
予選順位としては過去最高で終わり、マシンのバランスも最高の状態なので、誰もが決勝に向けては期待してこの日を終えました。メカニック達もいつもより入念にメンテナンスを行い、チームが一つになって明日の決勝に向けて整えている雰囲気を肌で感じました。 やはり、良い結果があるとチームの士気があがりいい方向に動き出すので、レースはただ出るだけではなくて結果が重要だなと改めて感じました。
過去最高のグリッドを獲得して意気揚々と決勝日を迎えました。グリッドから前は同じクラス2台しかいません。グリッドでいつもの記念撮影をして、12時半からのスタートに備えます。スタートドライバーは佐々木選手。内圧の確認調整も最後の最後まで行い佐々木選手に後は託しました。フォーメーションラップを挟んで12時半に決勝スタート。大きなトラブルや混乱もなくスタートが切られ、翌周にはロードスターがAドライバーのサクセスハンデでドライブスルーを消化。これにより2位に浮上しました。トップを走る#41のエアバスターGR86と#216HMR号だけが58秒~59秒台で走行し、後は2分フラットというラップでした。スタートから30分経過したくらいで、1位とは4秒~5秒くらいのギャップ。3位以下とは10秒以上も離している展開でした。予定では佐々木選手で90分のロングスティントを予定しており、ガソリン満タンで出ていることもあってなるべくタイヤを持たせる走行をしていました。ここまでは順調でしたが、このタイミングでST3クラスのフェアレディZが300R過ぎで大クラッシュ。FCYからのSCが導入されました。このタイミングでSCが出た場合はピットインしてスプラッシュでKENBOW選手に交代するプランでした。予定通りにそれを消化してピットアウトしても他のピットインしていない車両とは同一周回で合流することができ、SC中なのでその差も僅差。1位の#41や#3エンドレスもピットには入らなかったため、このままSCが空けたらかなり有利な位置につけていました。
がしかし、ここで赤旗中断。。。そこまでは良かったのですが、SCより前で止まった車両は赤旗解除後に送り出しで1周回ってSCの後ろにつくことに。これによって先にピットインした分が帳消しになるどころか、我々は周回遅れになってしまいました。45分ほどの赤旗中断後にSCスタートで再開し、再開後に当たり前ですが他チームはすぐにピットイン。スプラッシュで出て我々の周回遅れは確定しました。
ただ、まだ諦めるわけにはいかないので、残りの周回数と燃費を計算し直して、少しでもチャンスが転がっていないかエクセルと戦いました。そして、残りのドライバー交代義務回数は2回ですが、その2回とも給油ボトルは1本で済む計算でした。1本だとピット滞在義務時間の110秒を待つ必要がなく、ドライバー交代が終わればすぐにピットアウトできます。残りの周回数を考えるとタイヤ無交換は難しいため、次のピットではドライバー交代、給油ボトル1本、タイヤ4本交換で、最後のピットはドライバー交代と給油のみにしました。
最初に満タンでスタートしたのでこれが可能でしたが、他チームがどんな戦略でスタートしているかはわからないので、同じ戦略でしたら勝負権はもうないのですが、こうなったらやれることをやるしかない状況でした。
Aドライバーの義務乗車時間が赤旗中断のために43分に短縮され、それを消化したタイミングでピットイン。Cドライバーの妹尾選手に交代しました。予定通り給油ボトルは1本、タイヤは4本交換してピットアウトしました。ピット作業も完璧でした。
が、また勝利の女神は我々には微笑みませんでした。ピットアウトした周にまたも300R先で大クラッシュ発生。ガードレールが大きく破損しているのが確認できたので、また赤旗中断かと・・・。もう後1周早くこれが出ていたら良かったのに、これでもう完全に勝負権を失いました。また45分の中断となり、残り時間からAドライバーの乗車義務時間はなくなりました。#884のシェイドレーシングはAドライバーの義務時間を消化していませんでしたが、これが帳消しとなり、ピットイン義務回数も1回減ることとなったために、赤旗からの再開後は一気にトップに立ちました。
また、#60 G’motion GR86は赤旗直前にピットインしてピット内で待機していたため、赤旗解除前の送り出しによりピットイン時間のロスを帳消しにするだけではなく、1周得することになり2番手に浮上。全てをきっちりと消化してしまった#19 wedssportと#216 HMRは6位7位に・・・。そして、ピットインをまだ一度もしていない#66 ロードスターは2回もピットインをしないといけないことから、赤旗解除後に最下位にドロップ。
後半は#19との戦いとなりましたが、赤旗中断前にピットインしていたことで、その時の気温路温での内圧設定であったために再開後の気温路温にはマッチせずにペースが上がらず#19を抜くことは出来ませんでした。#66のロードスターに抜かれることはなくクラス6番手でチェッカーとなりました。
マシンは速かっただけにこのどうしようもないレース展開にやられてしまいました。また、シリーズランキングという点では、#19と5位争いをしていました。2つ以上上のポジションでゴールしたら5位だったので、予選までは完璧でしたがこれもうまくいかずにシリーズ6位が確定しました。赤旗中断というどうしようもないレース展開を味方に付けたチームは上に行き、見放されたチームは下に落ちたというのはどのクラスでも同じだったようです。本来のマシンの速さが反映しないレースとなりましたが、最終戦でマシンの戦闘力やピット戦略については完璧だったと思っています。来シーズンに向けては良い状態で締めくくれたので、2025年は開幕戦から上位争いをして、まずは初表彰台を獲得したいと思います。来年もチームHMR Racingの応援よろしくお願いします。