更新日時:2025/10/04
こんにちは。HMR広報の小川です。今回紹介するS660は、1990年代に一世を風靡した「ビート」の販売終了から19年の時を経て、多くのファンの期待を背負って復活した2シーター・オープン軽スポーツです。その開発は、社内公募企画で当時20代の若手エンジニアの案が約800件の中から選ばれたという、ロマンあふれるストーリーから始まりました。コンセプトは明確。「実用性」よりも「運動性能」を最優先した、走るためだけのピュアなマシン。今の時代に、これほどまでに運転の楽しさに振り切ったクルマが生まれたことに感謝したくなる、そんな特別な一台です。
S660のデザインは、エンジンを車体中央に搭載するミッドシップレイアウトでなければ決して実現できない、凝縮感に満ちています。「エキサイティング・スポーツ・プレイヤー」をテーマに、低く構えたノーズから、盛り上がったリアフェンダーへと続くラインは、まるで獲物を狙う猛獣のよう。どこから見ても、走りへの期待感を抱かせます。
アナログな操作感も楽しい「ロールトップ」 ルーフは、手動でくるくると巻き取ってフロントフード内に収納する、軽量な脱着式ソフトトップを採用。その手間すらも、このクルマと対話する時間として楽しめる、アナログな魅力に溢れています。
ドアを開ければ、まるで戦闘機のような、タイトでドライバー中心の空間が広がります。ドライバーを包み込むようにデザインされたインパネや、レーシングカーを彷彿とさせるDシェイプの小径ステアリングが、走りへの気分を高揚させます。収納スペースは、グローブボックスやドリンクホルダーなど最小限。ルーフを収納すれば、フロントフードのスペースも埋まってしまいます。しかし、その不便さすらも愛おしくなるほど、このクルマは走りに特化しているのです。
ビートがNA(自然吸気)だったのに対し、S660はターボエンジンを選択。そこには、現代のスポーツカーとしての明確な思想があります。N-BOXなどに搭載されるS07Aエンジンをベースに、S660専用のターボチャージャーを搭載。軽自動車の自主規制枠である64馬力という数値は同じでも、トルクの出方を専用にセッティングすることで、NAエンジンのようなレスポンスと気持ちの良い加速感を実現しています。
「NAよりも気持ちのいいターボを目指す」。この目標のもと、F1で培われた技術もフィードバックされるなど、ホンダの持つ技術を結集。クルマを操る楽しさと、現代に求められる環境性能を両立するための、必然の選択でした。
S660の走りの楽しさの核心は、軽自動車の常識を遥かに超えたシャシー性能にあります。 S660最大の特徴である「ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)」レイアウト。重いエンジンを車体の中央に置くことで、コーナリング時にクルマがコマのようにクルッと向きを変える、異次元の旋回性能を発揮します。リアタイヤにしっかりと荷重がかかる重量配分により、アクセルを踏み込んだ際に地面を力強く蹴り出すトラクション性能に優れています。
専用開発されたオープンボディは、一般的な軽自動車とは比較にならないほどの高い剛性を確保。「アジャイルハンドリングアシスト」(電子制御でコーナリングを補助する機能)といった先進技術も搭載し、安定したスポーツ走行を支えます。
「実用性がない」ことは、S660にとって欠点ではありません。それは、このクルマが日常の移動を非日常の喜びに変える「休日のための特別な靴」であることの証明なのです。軽自動車だから実現できた、驚くほど低い維持費。これこそが「趣味に振り切ったクルマ」を所有できる最大の理由。セカンドカーとして所有することで、その魅力は最大限に輝きます。移動時間を楽しみに変える魔法のようなこのクルマは、日本の宝と言えるでしょう。