更新日時:2024/09/11
HMR(エイチエムアール)のイシケンです。まだ残暑厳しい9月7日にモビリティリゾートもてぎにて5時間のレースが開催されました。今回のドライバーはAドライバーにKENBOW選手、Bドライバーに佐々木孝太選手、Cドライバーに妹尾智充選手、そしてDドライバーは私ISHIKENで登録しての戦いとなります。私は主にセッティング確認のドライバーとして乗るのでレースは戦いませんが、練習走行で乗ることが出来るのでエンジニアとして何をしたら良いのかがとても把握しやすいです。
毎年もてぎは走行時間がたっぷりとあります。今回も木曜日に3時間の走行が設定されていて、午後13時から16時まで全クラス合同での特別スポーツ走行が組まれていました。前戦のオートポリスではトラクション不足に悩まされていたので、今回はそこの対策をして持ち込みました。この走行の前日に富士スピードウェイでテストしたフィーリングではトラクション方向は何の不満もないレベルだったので、もてぎの路面に合うかどうかという感じでした。
このもてぎに向けて変更してきたことは、ボディダンパーの装着とリアバネの自由長変更です。ボディダンパーは市販車で装着している車両も増えていますが、オートポリス戦から4クラスでの装着が許可されて、いくつかのチームがこれを投入して良さそうだったのでうちも装着してみました。ボディダンパーは伸び側に効果があり、コーナーでしなって縮まったボディが反力で伸びようとするのをゆっくりと伸ばしてピーキーな挙動を抑えてくれるパーツです。レーシングカーはスポット増しやロールケージ溶接などのボディ補強をしているためガチガチで、硬い物が縮まった時に伸びる反力も大きいですから効果は絶大でした。安定感がグンと高まった感じです。
そして、リアのバネは自由長を長くしてトラクションを稼ぐ方向に振りました。バネレートは同じですが自由長が長くなった分粘りが出てこちらもトラクション方向にはプラス作用でした。ただその分少し車の動きがダルになったイメージでした。
この状態でスタートした木曜日の練習走行は、セット確認で私が最初に5周ほど乗りました。富士とは違って色々と不満な箇所がいっぱいというフィーリング。最初の課題はブレーキングからターンインでのフロントの粘りの無さでした。もてぎではタイムに影響するとても重要な要素です。ダンパーの減衰で何とかなるかを試しましたが上げても下げても悪い方向になったので、一旦すべて戻して佐々木選手にバトンタッチしてフィーリングを確認してもらいました。
フィーリングとしては私と一緒のコメントでしたので、フロントのストローク確保をしようという話になり車高を調整しました。それと同時にタイヤがかなり古い物だったのでNEWタイヤに交換してピットアウト。タイムは2分15秒274をマークして、スタートして30分くらいでしたがこの時点のクラスベストタイムとなりました。
その後も車高を中心にセットを変更していき、ある程度のところが見えたところで妹尾選手に5周ほどチェック走行してもらい、その後KENBOW選手にロングで乗ってもらいました。KENBOW選手は2分20秒くらいからスタートして、2分19秒フラットをベストタイムとしてこの日の走行は終えました。最後の1時間はまた佐々木選手に乗ってもらって今度はダンパーセットを煮詰めて行きこの日の練習走行を終えました。
他チームは後半にNEWタイヤを投入してタイムを出したため、総合結果はクラス3番手で初日の練習走行を終えました。路面が出来上がった後半にNEWタイヤを入れていたらうちも更にタイムアップしていたことを考えると初日から良い位置にいるなという印象でした。
5日の金曜日も朝からたっぷりと走行時間が用意されていました。朝8時半から1時間の特別スポーツ走行、10時から1時間のGr2専有走行、そして午後14時から2時間の全クラス混走の専有走行です。前日の走行が終わってからコーナーウェイトを煮詰める作業をしていました。このフィーリングチェックで佐々木選手からスタート。前日の課題であったブレーキングからコーナー侵入時のフロントの粘りについては良い方向になってきたのですが、今度はその分侵入時にリアがめくれてしまう(イン側のタイヤが滑る)症状が出て来て、これをいかに無くすのかがこの日の課題でした。主にダンパーの伸び側減衰の調整で前後バランスを取ることと、リアの車高調整をいくつか試して対策をしました。
Gr2の専有走行では予選シミュレーションでガソリンを軽くしてNEWタイヤでアタック。KENBOW選手は2分15秒480をマーク。昨日から4秒近くのタイムアップです。侵入時のリアのめくれは改善傾向にあり、トラクション方向にもっと欲しいということでリアのプリロードを調整してタイヤはキープで佐々木選手にアタックシミュレーションをしてもらいました。タイムは2分14秒334をマークしてこの時点でクラストップ。昨日から1秒近くのタイムアップです。完全なNEWなら13秒台を狙えたので、セットは良い方向に進んでいる状況でした。
午後の専有走行に向けては更にコーナーウェイトを調整して、欲しいところに荷重が乗るように微調整をしました。午後は決勝シミュレーションでガソリン満タン積んでのロングテストです。妹尾選手からスタートして30分の走行。2分16秒～17秒台のラップを刻みまずまずのペースを確認し、その後KENBOW選手に交代して30分のロングを走行。KENBOW選手は18秒～19秒台の走行で終えました。このロングの走行で燃費も測定していたのですが、これまでにないくらい燃費が悪く、決勝ではスプラッシュどころか全てのピットインでフルサービスしないと走り切れないことが分かりました。ピット戦略に幅を持たせることができないため、レースペースは良いが燃費で負けそうだなと・・・。
このもてぎは1DAY開催ということで、午前中に予選が行われて、午後から5時間の決勝レースでした。昨晩は更にコーナーウェイトを調整してこの予選に臨みました。最初はコーナーウェイトを合わせるというレベルでしたが、この時にはどこに荷重を載せたいからどこに何キロ載せるかというレベルまで来ていました。これが出来るのも経験豊富な佐々木選手のおかげです。
これが功を奏して、Aドライバー予選ではKENBOW選手がクラス3番手の2分12秒762をマーク！初日から比べるとなんと7秒もアップしました。毎晩佐々木選手からのコーチングを受けて走りを改善し、それにマシンも合ってきたというのがこのタイムを出せた要因です。Aドライバー予選の結果から、Bドライバー予選への期待がかなり高まった状態で佐々木選手がアタック。
がしかし、3クラスのマシンに引っかかってしまったり、3速が渋くなって入り辛くなるなどのトラブルもありタイムは2分12.244にとどまりクラス6番手となりました。合算の総合ではクラス5番手からのスタートとなりました。
その後のCDドライバー予選で妹尾選手が乗った時も3速に違和感を感じるとのことで、この走行後に予備のミッションに交換しました。
実はもてぎではミッションオイルの温度がこれまでにないくらい上昇していました。気温が高いことと、シフト回数が多いもてぎではミッションにも厳しいサーキットです。ワコーズさんにも相談して急遽その場で少し高い粘度のオイルをブレンドして使うことにしました。ただ、予備のミッションは中古なので決勝5時間持ってくれるのかどうかという不安がありながらのスタートとなりました。
ピットウォークを挟んで迎えた決勝。これまではスタート前にガソリンが漏れるトラブルが出ていましたが、今回は対策したことで何事もなくグリッドについてスタートを待つのみとなりました。気温は33度で路面からの照り返しもかなりきつく、ドライバーにもマシンにもきつい5時間レースになりそうでした。
スタートドライバーは佐々木選手です。午後12時半からスタートすると1周目というか3コーナーを回る頃には3番手までジャンプアップ。そして、#66のロードスターRFがAドライバー規定絡みのドライブスルーを消化すると2番手に上がり、ここから1時間以上#884シェイドレーシングGR86との2番手争いが繰り広げられて行きました。#884はウェイトを45kg積んでいるため後半はタイヤがきつくなるだろうと読んでいたので、前半抑えきれれば引き離していけると思っていました。
その読み通り40分くらい経ってくるとペースが落ちて来てその差は広がって行きました。1位を走る#3エンドレスGR86もウェイトは45kgなので同じ状況だろうと、ここから1位を猛追か！？と思っていたところで懸念していたミッショントラブルが発生・・・。3速が渋くなってきたということで、ここからペースダウンしてミッションを労わる走行に切り替わりました。その結果、差がついた#884にまた迫られる展開となり、このまま1時間20分の1スティントをテールトゥノーズのままギリギリの戦いで終えてくれました。
2スティントはKENBOW選手。ピット作業はスムーズに終わり、100秒のストップタイムも難なくクリアしてコースインさせることができました。オートポリスではピット作業が遅すぎて他チームと比較すると1回で20秒くらい遅かったのです。これが掛ける3回となると勝負になりません。そこで、もてぎに向けて社内でタイヤ交換の練習を何度も何度も行い、ビデオ撮影してどこを改善するのかなども行って臨んだ最初のピット作業だったので、うまく作業をこなせたメカニック達はとても満足気な表情でした。
KENBOW選手はＡドライバー規定の75分走行をこなす必要があります。灼熱の中ミッションを労わりつつタイムをそこまで落とさずの走行ということで、アマチュアドライバーには難しい仕事をしてもらいました。2分18秒～19秒くらいのラップタイムで走行し、他チームがプロドライバーの走行ということもあり順位は5番手まで落ちていましたが、着実な走行で妹尾選手にバトンタッチ。
ピットアウトした時には6番手を走行。#18ウェッズスポーツGR86がスプラッシュでドライバー交代のみしてピットアウトした関係で前に出られてしまいました。ここに来て懸念していた燃費が悪くてピット戦略で遅れをとるというのが出てきました。妹尾選手は17秒台でラップして#18をパスして5番手に上がりピットイン。最終スティントを佐々木選手に託してピットアウトしました。ここまでピット作業は全て完璧に行い送り出すことができました。ピットアウトした時には6番手に落ちていましたので、また#18を追い上げるという展開でしたが、ミッションが更に悪くなっていてペースを上げることは難しく、逆に離されていく展開だったためチェッカーを受けることを優先して走行してもらいました。
最終ラップでトップを走っていた#884がガス欠でピットイン。その時点でチェッカーが出たために完走扱いとはならず、順位は5位でチェッカーとなりました。
OH済みのミッションを準備しておけば5時間走行は問題なく全開で走れたため、それがあれば表彰台が見えたレースでした。マシンのセットアップは毎戦良くなりトップといよいよ争えるレベルに近づいているため、次戦の岡山に向けてはスペアパーツの準備含めて戦える用意をして臨みたいと思います。
ただ、自社メカニックで戦っているうちのチームは、通常作業もありレースを優先するわけには行きません。嬉しいことに販売台数も整備のご依頼も日々増えている状況でメカニックの人数は変わらないため、日常業務をこなすだけでも大変な状況です。そのような中でのレース準備ということで、上位を戦うためにはメカニックが圧倒的に足りていないです。
このバランスをうまく取りながら戦って行きますが、一緒に働いてくれるメカニックが増えてくれたらとても助かります。常時募集しているので興味のある方は会社見学にまずは足を運んでみてほしいです。
下記のページから会社見学希望と記載して送信してください。お待ちしています！！
https://hm-r.co.jp/recruit/
このような状況ですが、次戦の岡山もいい争いができるように準備していきますので、引き続き応援よろしくお願い致します。
winmax 様
株式会社テイン様
株式会社和光ケミカル様
エンケイ株式会社様
株式会社セラメタ様
パワークラフト様
プロコンポジット様
ACOAT（エーコート）様
株式会社エイチ･ピー･アイ様
