更新日時:2025/03/26
HMR(エイチエムアール)のイシケンです。今シーズンもいよいよ開幕です。引き続きST4クラスにGR86にて参戦をします。参戦概要は「HMR Racing 2025スーパー耐久シリーズ 参戦概要」をご覧ください。開幕戦はモビリティリゾートもてぎになります。ST4クラスは今シーズンSUGOと岡山国際がお休みラウンドになり、このもてぎで第1戦と2戦が開催されるというフォーマットで、メカニックにはとてもハードなレースウィークとなりました。
いつも通り木曜日からレースウィークがスタートしました。今シーズンはアペックスさんとコラボしてダンパー開発を行って行きます。ここが一番の変更ポイントと言っても過言ではないくらい、レースウィークのメニューはダンパーとバネレート、スタビの組み合わせ、車高バランスやアライメントなどなど主に足回りのセット変更がメインでした。
基本的にアンダーステアが出ている状態だったので、これをいかに消しに行くかというのにフリープラクティスを消化していきました。アンダーステアが改善されたと思ったらトラクション不足が出てきたりと、正直土曜日の予選とレース1までに良いバランスを見つけることは出来ませんでしたが、このダンパーの特性を理解できて次への改善点も明確になったフリープラクティスでした。
マシンの方は何のトラブルもなく、今期から投入している自社製作エンジンも元気に走ってくれたので、セット変更に多くの時間を費やすことが出来たのは良かったです。
3名のドライバーがそれぞれ乗り込みながらマシンの評価をしていきましたが、主にはAドライバーの私が運転しやすいマシンを軸に、Bドライバーの佐々木選手が更に煮詰めていき、そのセットをCドライバーの石森選手が確認するという流れで進めていきました。
木曜日と金曜日でそれぞれNEWタイヤを1セット投入して、そのタイヤで走り続けてUSEDでのバランスもチェックするという流れでしたが、今シーズンはNEWからの落ち込みが大きい印象で、特にフロントタイヤの粘りがすぐになくなってしまう印象でした。タイヤは何も変わっていないので、マシンバランスの問題なのだと思います。決勝ではこのフロントタイヤのマネジメントがポイントになりそうだなと。
一方で、私は今シーズン久しぶりのS耐ということで、まずはこのフリープラクティスで混走に慣れるというのと、ブレーキで行き過ぎてしまうというのとコーナー奥までブレーキを残してしまうという癖を修正することに集中していました。まずはブレーキを行き過ぎないというところからの修正をしていたので、タイムは2分17秒とか18秒という遅いタイム(佐々木選手は13秒~14秒)で周回しましたが、佐々木選手からは、タイムはいいからまずは合わせこみましょうという指導で走っていました。
ちなみに、今年はエンジニア業務は外部に委託をして私はドライビングに集中できる環境を作ったので、純粋に走りを追及出来てとても楽しいレースウィークでした。
そんな感じで木曜日と金曜日のフリープラクティスを終えて、NEWタイヤを入れた時のタイム(2分10秒9くらい)だけで見ると全体の4~5番手くらいでした。周りは9秒台に入っているので、1秒足りない状態でした。
そんな状態で迎えたレース1の予選。土曜日の8時からAドライバー予選がスタートしました。気温、路面温度ともにまだかなり低い状態で、ウォームアップを2周入れる想定でコースインしました。
今回はピット位置が入ってすぐの場所のため、スタートしてすぐに出て行くとST5クラスに引っかかってしまう可能性があるので、2分ほど空けてコースインしました。ただ、コースインすると想定以上にタイヤのウォームアップに苦しみ、なかなか温まらない。後ろからはアタックしている車両が来るので、邪魔にならないように避けてタイヤを温めてというのを行いましたが、アタック中の位置が悪く2台に引っかかってしまいました。
1コーナーで同じクラスのNCロードスターをインからさして抜いて、5コーナーでは5クラスのロードスターにブレーキングポイントと立ち上がりで抑えられてしまうという感じのアタックラップになり、タイムは2分10秒977で5番手でした。フィーリング的には1秒は縮められたので、9秒台は出せたなと言う感じでした。もし9秒台に入っていたとしてもAドライバー予選としては3番手でしたので、まだまだ改善しないとという感じでした。
続いてのBドライバー予選では、私の予選とは違ってすぐにコースインすることにしました。もちろんセットも少し変更して送り出しています。全てクリアでアタックできたものの、タイムは2分9秒664とあまり伸びずでBドライバー予選4番手、ABドライバー合算で5番手からのスタートとなりました。
Cドライバー予選ではガソリンを決勝想定で積んだ状態で周回して決勝バランスのチェックをしてもらいました。やはりバランス的にはアンダー傾向というのは変わらずでしたが、決して乗り辛いという訳ではないということで、決勝はこのセットのままで行くこととなりました。
スタートドライバーは佐々木選手。気温は朝とは違ってかなり高くなりどちらかと言うと暑いくらいでした。グリッドでいつもの記念撮影を終えて13時から4時間のレースがスタートしました。
66号車のロードスターRFがエンジントラブルでピットスタートになったため、順位は4番手からのスタートになりました。スタートしてすぐに前を走る60号車のG’motion GR86をパスし3番手に浮上。目の前には884号車のシェイドレーシングGR86。60号車と884号車はどちらもAドライバーがスタートなので、早めにパスして私に代わった時のためにギャップを築いておく必要があります。
ただ、884号車のペースは良く、抜くまでには至らずに1秒以内の差で1時間経過して行きました。そして、後ろからはピットスタートした66号車のロードスターRFが猛烈な勢いで追い上げて来て、884号車も抜いて2番手までポジションアップ。1時間経過したタイミングで884号車はAドライバー乗車義務時間を消化したのでピットイン。順位は一時的に3番手に戻りました。
そして33周目に予定通りのピットインを行い、フルサービスをしてAドライバーに交代してピットアウト。ピット作業はこれまでで一番速く、ピット滞在義務時間を待つ状態でした。
ここから60分のAドライバー乗車義務時間の消化です。まずは14秒台から走り出してタイヤが垂れて来ても15秒後半から16秒前半でラップしたいと思っていましたが、コースインした直後からブレーキがフカフカ。とても攻められる状態ではなく、ラップは16秒台からスタートになり、遅い時は18秒台まで落ちてしまう状態でした。
ブレーキ温度が高い状態なのかなと思い、ブレーキポイントをかなり手前に持って来てなるべくブレーキを使わないで冷やすことにしました。ブレーキタッチが戻ってきたので、それ以上悪化させないためにブレーキ踏力はそこまで上げずにペースを維持する方向で走り続けました。後半になってタイムは16秒前半まで戻して来れましたが、もうこの時点で順位は5番手まで落ちていました。
60分経過したところでCドライバーの石森選手へ交代。フルサービスで送り出して、その後は特にブレーキトラブルは出ることなく走行が続きました。石森選手もブレーキを労わりながらの走行をしてくれたことで、最終スティントでまた私が乗りこんだ際はブレーキは何も問題のない状態になっていました。
本来はタイヤ交換なしでドライバー交代だけしてスプラッシュでピットアウト予定でしたが、翌日のレース2に向けての私のトレーニングも兼ねて、NEWタイヤを入れて残りの30分を走行しました。ブレーキに何も違和感がないため、14秒台でラップし始めて15秒台をキープしつつ、他のマシンに引っかかった時は16秒台のラップもありながらもペース良く走ることが出来ました。
そして、17時に無事チェッカーを受けることができました。マシンはブレーキ温度が上がりすぎたことでのトラブル以外はメカニカルなトラブルは一切なく走り切ることができました。チェッカー前の周で66号車のロードスターRFが止まってしまったため6位まで落ちていた順位は5位に繰り上がって予選と同じ順位でゴールとなりました。
レース1が終わってから翌日のレースに向けて同じセットで走っても結果は見えているので、思い切って変更することにしました。メカ達はレース2に向けてメンテナンスとセット変更のため、作業が終わったのは12時近く。。。4時間の2レースは労働環境的にはダメだと思いますね。メカ達にきつすぎます。
日が空けて日曜日のレース2の予選。8時30分からAドライバー予選が始まりました。昨日よりは気温路温ともに高く、ウォームアップは1周にしました。そして、予選開始と同時にピットアウト。このレースでは一番遅いクラスが4クラスになるので引っかかることはありません。
前には66号車のロードスターRFが走っていて、同じようにウォームアップ走行をしていましたが、ロードスターはウォームアップに2周使っていました。こちらはアタックしている周にまだロードスターはウォームアップ中でストレートではマシンを横に振っている状態。それなのに全く追いつかない。マシンのバランス的には特に悪い印象はなく、全開でアタックしているのにウォームアップしているロードスターに全く追いつかないという状態でした。S字手前で譲ってくれたので特に引っかかることはなかったのですが、この時点でかなり遅いのではないかとアタックしながら思っていました。
その読みはあたりアタック1周目は12秒台。続けてアタックして11秒706。昨日の引っかかった予選よりもかなり遅い予選となり、Aドライバー予選6番手となりました。昨日施したセット変更は全体的に柔らかくロールする方向だったので、それが悪さしたのか横Gがそのまま横に残ってしまって前に進んで行かない印象でした。
Bドライバー予選に向けては少しダンパー側でそのロールを抑える方向で調整して出て行きましたが、タイムは2分10秒798と同じく伸びずにこちらも6番手。AB合算で6番手からのスタートとなりました。
それと、佐々木選手も私もこの予選中にブレーキに少し不安を感じていました。いつもよりペダルストロークが多く制動が出ていないと。その結果ブレーキでも奥まで行くことが出来ませんでした。昨日キャリパーを新しく交換しているので、エアが抜けきっていない可能性があり、Cドライバー予選に向けてエア抜きを行いチェックすることになりました。
レース2のスタートは私が務めました。ピットウォークを挟んで11時40分にスタート進行のためにグリッドへ出走!というところで乗り込んでブレーキを踏んだらペダルに反力がない。踏んだらそのまま床まで行ってしまいました。エンジンを切ってペダルを踏んでもそこまで硬くならず、エンジンをかけると床まで行ってしまう。とりあえずコース出てみて様子を見ようとなりピットアウトしたものの、全くブレーキが効かない状態だったのでグリッドに着くことなくそのままピットインしました。
再度エア抜きを入念に行ってペダルタッチは元に戻ったので、スタート時間には間に合ってピットスタートになりました。前にはエンジン制御系のトラブルでピットスタートになった60号車のG’motion GR86がいたので、まずはこことの戦いかなという感じ。全車がスタートラインを越えてから信号が青になってコースイン。ただ、60号車との間にST-Xクラスのバンテージがいて、これがすぐにスタートしていかないものだから60号車とは数秒の差が開いてコースインすることになってしまいました。ブレーキのフィーリングは特に問題なく、コースはクリアでタイヤカスもまだ何もない状態なのでフルプッシュしました。
14秒台でスタートして15秒台ラップを重ねていき、予定通り60号車をパス。続いて今シーズンから参戦しているスイフトスポーツ、NCロードスターと立て続けにパスして順位は予選と同じ6番手まで戻しました。そして前方には18号車のwed’s Sport GR86が見えて来て、あと数周で追いつくというタイミングで18号車はピットイン。これで5位にポジションアップしました。
このくらいのタイミングからまたしてもブレーキのフィーリングがおかしくなり始めました。ペダルがフカフカになってきて、昨日のように冷やしても全く改善されませんでした。床までもう少しという位置でなんとか制動はしてくれるのですが、少しでも強く踏んだり長く踏むと床まで行ってしまうので、かなり気を使いながら走行を続けました。
ラップタイムは18秒台まで落ちて、抜いたはずの60号車にも追いつかれてしまったので、無理に争うことはせずに先に行ってもらいました。こんなブレーキ状態でしたが60分のAドライバー乗車義務時間だけは消化しておきたかったので頑張って走りました。
ピットインするまでブレーキの状態は改善されることはなく、そのまま佐々木選手に交代しました。私の走り方の問題もあるかなというところもあったのですが、佐々木選手に交代しても症状は変わらずにこのままでは危険ということで修理することになりました。
ピットインしてエア抜きして送り出したのですが、また数周するとフカフカになるということで再度ピットイン。原因はブレーキホースの取付け部品の問題で、そこからエアが混入していました。そこの修理を行い、念のため昨日使ったキャリパーに交換してピットアウトしました。
ドライバーは石森選手に交代して送り出し、その後は特にブレーキトラブルが出ることなく順調に周回を重ねていきました。最後に佐々木選手に交代して3回のドライバー交代義務を消化し、あとは順位確定の70%の周回数を確保できるかどうかの勝負でした。
ただ、今回のレースではFCYが1度だけ少し出たくらいでとてもクリーンなレースだったため、残念ながら順位確定周回数まであと2周足りずにチェッカーとなりました。メカニック達が連日大変な作業を行って、決勝中もブレーキトラブルを直して送り出してくれたのでなんとか完走したかったのですが、少し足りませんでした。
今期はもう少し上で戦えると思っていたのですがそう甘くはなかったですね。まだまだ煮詰めないと行けないところが多く残っているので、次戦の鈴鹿に向けて少しでも改善していければと思います。次戦に向けてはダンパーのストロークセンサーを追加して、これまでドライバーフィーリングで煮詰めていたところをデータで分析できるようにしていきます。これでずっと悩まされてきた足回りのセットが煮詰められればと思っています。
1ヶ月しか時間はないですが、winmaxさんとブレーキ周りの改善も行って行ければと思っています。引き続きHMRのスーパー耐久チャレンジを応援よろしくお願いします。